横浜市役所 様

活用事例

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  • 業務内容:新型コロナウイルスワクチン接種協力医療機関との調整、ワクチン接種業務全般
  • この記事で使われているトヨクモ製品:FormBridge、kViewer
  • 利用用途:ワクチン接種予約の空き状況検索サイト、協力医療機関の名簿管理システム
  • URL:https://www.city.yokohama.lg.jp/
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新型コロナワクチン接種予約に関する業務を、 kintoneとトヨクモ製品で効率化した横浜市のDX活用法とは


横浜市役所の健康福祉局健康安全課ワクチン接種調整等担当は172名(2022年12月末時点)おり、新型コロナウイルスワクチン接種協力医療機関との調整やワクチン接種業務全般を手掛けています。

新型コロナワクチンは2021年4月から接種が開始され、すぐに2回目の接種が始まりました。横浜市には約2,000の医療機関があるのですが、その中で新型コロナワクチンを接種できる医療機関のリストを市のホームページで公開していました。

接種を希望する市民は、そのリストに記載された医療機関まで電話をして予約しなければなりませんでした。電話を掛けても、予約が既にいっぱいで無駄な手間が発生することも多かったようです。

そうした中、3回目のワクチン接種が始まることになりました。予約が取れない市民、電話応対に追われる病院の手間を省くべく、横浜市役所は「空き状況検索サイト」と「協力医療機関名簿管理」のシステムを日立製作所による取りまとめのもと、構築しました。

今回は、kintoneとトヨクモ製品を組み合わせて、短期間で課題を解決した経緯について谷口翔太氏と端坂優里氏にお話を伺いました。
 

健康福祉局健康安全課ワクチン接種調整等担当 医療調整班 谷口翔太氏と端坂優里氏

膨大な数の架電確認の負担を減らすべく「空き状況検索サイト」を構築



横浜市では、ワクチン接種可能と公表している医療機関が約1,200箇所あり、電話番号などを掲載したリストをホームページで公開していました。当初、市民がワクチン接種を予約するためには、そのリストの上から順番に電話をかけます。すでに予約が埋まっていた場合は、次の医療機関に架電をします。予約が取れないのに、たくさんの電話をしなければならないのは、市民にとって大きな負担となっていました。

ワクチン接種の予約ピーク時には、横浜市だけでも1週間で6万件ものワクチン接種が行われていたそうです。接種者が対象の医療機関へ一斉に電話をかけるため、大きな混乱が発生し医療機関は窮地に陥りました。

医療機関では、すでに予約が埋まり予約を受け付けることができない状況でも、いっこうに予約希望の電話が鳴りやまず、受話器を置いたら直後に電話が鳴る、という状況だったそうです。医療機関によっては、通常の診療に影響が出るほどの電話がかかってきており、最終的に予約の電話がつながらない市民が、病院の窓口に殺到する事態となっていたそうです。

「この状況を受けて、ワクチンの予約枠が空いてるかどうかをWebサイトで表示できれば解決するのではないかと考えました。そこで、日付ごとに予約の空き状況を○や×で表示する空き状況検索サイトを作ることになりました」(谷口氏)

横浜市のホームページ管理を委託している日立製作所に相談したところ、kintoneを紹介されたそうです。同じような仕組みを他の自治体が導入しており、そのデモを見せてもらったところ、横浜市でも導入しよう、となりました。その際「フォームブリッジ」と「kViewer」も組み込まれた形で提案されたそうです。リリースまでに時間もなく、横浜市の要望も満たしていたので、パッケージのような形でkintoneとトヨクモ製品の導入を決定しました。

2022年1月に「フォームブリッジ」と「kViewer」のプロフェッショナルコースをご契約いただき、2022年2月に3回目のワクチン接種が始まるタイミングに合わせて、急遽開発を行いリリースしたそうです。Webサイトでは医療機関ごとにカレンダーが表示され、空いている日には"○"、予定が埋まった日は"×"、受け付けていない日は"-"が表示されます。

ウェブの操作ができる人は、その画面から別システムの「横浜市予約専用サイト」に遷移し予約します。ウェブの操作が難しい人は電話予約を受け付けている医療機関や横浜市のコールセンターに電話を掛けて予約します。 


横浜市のホームページで医療機関ごとに予約の空き状況がわかるようになりました。


「予約の空き状況が見られるようになったので、電話を掛けたのに予約がいっぱいで断られる、ということがなくなりました。市民の方は無駄な電話を掛けずに済むようになり、医療機関への問い合わせも減ったのが大きな効果です」(谷口氏)

空き情報は予約専用サイトの情報を連携して取り込んだり、医療機関が自分で入力したりして、1時間ごとに最新の状態に更新されるようになりました。

以前は、医療機関への電話問い合わせが殺到し、電話での受付を取り下げるところが続出していました。「空き状況検索サイト」が完成したことで、再度、受付を再開するように医療機関に働きかけ、徐々に登録件数が増えていったそうです。



予約システムを使っていない医療機関は「フォームブリッジ」と「kViewer」で構築した画面でワクチン接種枠や空き状況を入力します


協力医療機関の正確な情報を手軽に管理するために名簿システムを構築


各医療機関では、新型コロナワクチン接種に関する問い合わせ電話が多いため、コロナワクチン用の電話番号を用意したり、受付時間などの基本情報の変更が発生するところもあります。ここで問題が起きました。

以前は医療機関の情報を横浜市の電子申請システムで集め、Excelで管理していました。しかし、横浜市の電子申請システムは、誰が申請してきたのかを判別できないという課題があったのです。例えば「Aクリニック」という病院が市内に複数あった場合、市内のどの「Aクリニック」からの申請か判別することが難しく、情報の突合が困難でした。さらに、電子申請システムのメモ欄に受付時間や受付方法、例えば電話で受け付ける場合は電話番号、Webサイトで受け付けるのであればURLを入力していました。記載方法の様式をある程度定めたものの、医療機関によってばらばらの情報を入力していたそうです。

そのため、医療機関から電話番号を変更したいといった申請内容は個別に精査する必要があり、場合によっては医療機関に対して電話で問い合わせをするなど、時間も手間もかかっていました。医療機関の最新の情報をホームページのリストに反映したいのに、更新されるまでに3週間くらいかかってしまっていたのです。さらに、更新は手作業で行っていたため、ヒューマンエラーが発生するおそれもあります。

そこで、「協力医療機関名簿管理」システムを開発し、2022年9月にリリースしました。「フォームブリッジ」と「kViewer」の「Toyokumo kintoneApp認証」を組み合わせることで、2,000の医療機関が、登録しているメールアドレスでログインし、情報を確認、修正することができるようになりました。もちろん、「Toyokumo kintoneApp認証」で認証しているので、認証時にどの医療機関が入力しているのか特定できることから、同名のクリニックが混同され、他の医療機関の情報を誤って変更してしまうことはありません。


特に情報の精査が不要な項目については、医療機関が入力すれば即時更新され、最新の情報がリアルタイムに市民に届けられるようになりました。精査が必要な項目も、手間が大きく省けるようになったため、3週間かかっていた更新作業を約1週間に短縮することができたそうです。

「以前は、医療機関が申請した情報を忘れてしまった場合、確認するすべがありませんでした。『協力医療機関名簿管理』システムでは、どんな情報が登録されているのかが見えるので、わかりやすくなったという声をいただいています。もちろん、反映までの時間が短くなったのは好評です」(端坂氏)

医療機関側が自分で情報を確認、変更できるようになりました。

頻繁に変更される新型コロナワクチンに関するルールや事務連絡を「kViewer」で共有


新型コロナワクチン接種のルールは、日々変動しています。例えば、異なる種類のワクチンを接種する際の間隔のルールなどがいきなり変わり、情報が発出されます。医療機関としては常に最新情報を把握しておく必要があります。そのため従来は、横浜市側から登録医療機関にメーリングリストで変更情報を一斉送信していました。

その結果、多い時は1日に2通も3通もメールを送ることがあり、医療機関側からメールをチェックするのが大変だという意見が出たそうです。そこで、全医療機関に向けて、「kViewer」で事務連絡のビューを作って、最新情報をすぐ見られるようにしました。そうすることで、kintoneアカウントを付与する必要なくリアルタイムに情報を確認できるようになりました。

情報共有はkintoneに事務連絡のPDFを登録するだけです


医療機関側は「kViewer」のビューにアクセスし、いつでも最新情報を把握することができます


 kintoneとトヨクモ製品を組み合わせ、ワクチン接種に関する業務を大きく改善した横浜市。短い開発期間に多くの市民や医療機関が利用するシステムを構築したのは素晴らしいポイントです。

 情報の一覧を表示するときに空き状況を表示しよう、フォームから申請してもらって情報をクラウドで管理しよう、最新情報をWebサイトで共有しよう、といったシンプルな着眼点から、これだけの大きな導入効果が得られたとのこと、素晴らしい事例をご紹介いただきました。

最後に、今後の展望について伺いました。


「来年度の事業がどうなるかにもよりますが、『協力医療機関名簿管理』のシステムは引き続き活用していこうと思っています」(端坂氏)
「今、いろんな会社がワクチンの開発をしており、今後接種できるワクチンの種類が増えるとなると管理するデータも増えます。これから状況がどう変わるのかはわかりませんが、kintoneとトヨクモ製品で作ったこのシステムがあるのは、心強いです」と谷口氏は締めてくれました。

記事公開日:2023年4月3日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります