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神奈川県kintone連携サービスの導入でLINEコロナお知らせシステムを5日間で完成させる

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新型コロナウイルスに伴い発令された緊急事態宣言の解除に向けて、神奈川県は経済活動の再開と感染防止対策の普及という、Withコロナ社会の実現に追われていました。

その一環として、新型コロナウイルスの拡大防止のため、「感染防止対策取組書・LINEコロナお知らせシステム」の取組みを実施しています。目的は、①ガイドラインに則した感染防止対策の普及、②保健所の疫学調査業務の支援です。

飲食店などの事業者がこのシステムに登録すると、個別のQRコードが埋め込まれた「感染防止対策取組書」が発行されます。この取組書により、店舗等に訪れた利用者は感染防止対策の内容を確認でき、さらにQRコードを読み取ることで、陽性患者が発生した際には、保健所が各自の判断で、同時間帯に同じ場所にいた他のユーザーにLINEでメッセージを送ることができるようになります。

通常、保健所は陽性患者本人への聞き取り調査で濃厚接触者を絞り込みます。このシステムを用いることで、今まで保健所が検疫調査の中でアプローチできなかった、陽性患者の周りにいた、陽性患者が名前を知らない、直接面識のない人に対しても保健所から連絡することが可能となりました。

なんと、この取組みは2020年5月20日に公表され、26日の緊急事態宣言明けに運用開始するというとてもタイトなスケジュールで開発されました。この離れ業を支えたのが、kintone、そして「フォームブリッジ」「プリントクリエイター」「kViewer」「kMailer」です。

今回は、「感染防止対策取組書・LINEコロナお知らせシステム」の開発の経緯について、神奈川県庁の新型コロナウイルス感染症神奈川対策本部IT班の櫻井瞭氏とシステムの構築を担当したワークログ株式会社(https://www.worklog-inc.com/)の山本純平氏にお話を伺いました。

新型コロナウイルス感染症神奈川対策本部IT班 櫻井瞭氏

(神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室との兼務)


ワークログ株式会社 山本純平氏


kintone導入の経緯■病院の物資や患者の情報を集約するためにクラウドサービスが必要になった


新型コロナウイルス感染症神奈川県対策本部では、医療機関や保健所など現場の状況を把握し、即時に的確な判断をするための情報基盤が必要であるという課題を抱えていました

「官公庁では基本的にクラウドサービスを使っていません。しかし、刻々と状況が変化する中で、医療機関や保健所が情報を入力できる情報基盤を早急に構築しなければ医療崩壊は避けられません。その中で検討を重ねた結果、サイボウズ株式会社が提供しているkintoneを迅速に導入することにしました」(櫻井氏)

kintoneはまず、病院や保健所と情報を共有し、蓄積するデータベースとして利用していました。物資在庫や病床等の情報がリアルタイムで共有できるようになっただけでなく、グラフも作成できるので情報をわかりやすく伝達することにも長けていました。現在は約400程度のアカウントで運用しています。

そのような中、緊急事態宣言が解除されることになり、神奈川県知事は5月20日、「緊急事態宣言解除後の神奈川ビジョン」について説明した中で、「LINEコロナお知らせシステム(仮称)」という施策を発表しました。

「経済活動再開時のリスク低減」のため、濃厚接触の疑いがある人にLINEで通知するという内容です。当初は月末に解除される予定でしたが、5月25日に前倒しされたため開発期間は僅か5日間しか与えられませんでした。

「5月26日には運用を開始する必要が出てきましたので、対策本部のシステム全般を支援頂いていた山本さんに、何とかこのスケジュールで実現できないか、と相談させていただきました」(櫻井氏)

導入と効果■kintoneと4つの連携サービスを組み合わせて自動で処理が完了するようにした


山本氏はシステムの受託開発やコンサルティングを行うワークログ株式会社に所属しており、kintoneアプリ開発の経験も豊富でした。対策本部の技術顧問としてチームの一員となり業務を遂行していました。

発表がある数日前、「感染防止対策取組書」という施策で、各事業者が行っている対策内容を登録してもらい、神奈川県としてその取り組みを表す書面を交付するという企画がありました。

「私は骨子を作っているところでした。kintoneと「フォームブリッジ」と「プリントクリエイター」を組み合わせたらできるかな、と構想していた矢先に、大阪府が追跡システムを開発すると発表したのです」(山本氏)

大阪府は5月16日から休業要請が一部解除され、17日に「大阪コロナ追跡システム」の導入を発表しました。これを受け、神奈川県ではLINEで通知できるシステムを開発することを決めました。その直後、緊急事態宣言解除の前倒しが発表され、結局5日間で突貫作業となったそうです。

感染を抑制するために必要なのが、新型コロナウィルスの陽性者が出た場合、濃厚接触者を特定する作業です。しかし、ライブやイベントなどで同じ場所にいたとしても、名前や連絡先などわかるはずもありません。そこで、「感染防止対策取組書」と組み合わせてLINEのシステムを構築することになりました。

事業者に自社の情報と実施している感染対策を登録してもらい、「感染防止対策取組書」を発行します。そして、そこに事業者ごとに個別のQRコードを記載するのがポイントです。事業者は店頭などに「感染防止対策取組書」を貼り出し、来店した人たちにQRコードを読み込んでもらうのです。陽性者が出た時は、保健所が陽性患者に対する行動履歴の調査を行っているので、濃厚接触者が多数存在する可能性の高い施設を利用していた人については、同時刻に同じ場所にいた人に、濃厚接触の疑いがあるので保健所に連絡するよう、LINEでメッセージが届きます。

フォームブリッジで事業者が情報を登録するフォームを作成しました。


実際に運用されている登録フォームです。


神奈川県の各事業者は、入力が完了すると、「kMailer」から、「感染防止対策取組書」をダウンロードできる「kViewer」で作成したMyページのURLが送付されます。

「kViewer」のMyページで登録情報を確認できるようにしました。


Myページを開くと、「感染防止対策取組書」等を出力するボタンがあるので、クリックすると「プリントクリエイター」でPDFがダウンロードされます。事業者はそのPDFを印刷し掲示するだけです。

QRコードを埋め込んだ取組書等をダウンロードできるようにしました。


実際に使用されている「感染防止対策取組書」「店頭用POP」のサンプルです。


kintoneとトヨクモの4製品を見事に連携させ、目的を達成しています。業務で豊富なkintoneの開発経験を積んだ山本氏のおかげでしょう。

「kintoneとトヨクモさんのサービスを選んだ一番の理由はスピードです。5日間でとにかく動く物を作らなければならず、既に神奈川県で使われていたkintoneと、外部からのアクセスを許可するためにトヨクモさんのサービスを選びました。登録フォームだけでなく、メール・ビューワー・出力の製品が全て揃っており、連携も容易であることも選んだ理由の1つです。後は、サポートが丁寧なのも良いですね」(山本氏)

さらに意識したことは、完全自動化。神奈川県には約28万の事業者が存在するそうで、極力登録から取組書の発行までに人的操作を介さないよう設計すべきと考えました。そのため、すべての行程をシステム的に完了できるようにしたということです。

神奈川県は「県内の最新感染動向」(https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/1369/?pk_campaign=top&pk_kwd=sc19)というページで感染防止対策取組書・LINEコロナお知らせシステム登録事業者数を公開しており、2020年7月31日段階で4万890件登録されていました。

「実際に取組書を貼り出してもらっているようで、QRコードを読み込ませる人も増えています。システム障害を起こさず、いいスタートができたためか、スムーズに登録事業者数が伸びてきました。」(櫻井氏)

この取り組みは新型コロナウイルス対策と事業者の経済活動が共存するには不可欠なものなので、今後も継続して運用するとのことでした。

最後に、一言いただきました。


「県の取組みとは別に、事業者様は大変な努力をして既に感染症対策を実施しているところが多いです。そんな事業者様にも、県のLINEコロナお知らせシステムが導入されている取組書の導入を新たに始めていただけるところが増えると嬉しいです。県民の皆さんは、店舗等で県の取組書を見つけたら、是非QRコードを読み込んで活用していただけると幸いです」と櫻井氏は締めました。