学内外の申請業務をkintone連携サービスでペーパレス化!年間約1,800時間の業務時間を削減した長崎大学の活用事例
国立大学法人長崎大学は、学内外の多様な申請業務や施設管理において、紙ベースの運用とそれに伴う電話対応の煩雑さに課題を抱えていました。
Toyokumo kintoneAppの導入によりこれらの課題を解決し、業務効率を飛躍的に向上させ、職員がコア業務に集中できる環境を実現しています。
この記事では、情報企画課の香椎氏に、kintoneと連携サービスを活用した具体的な取り組みとその効果についてお話しを伺いました。
紙ベースでのさまざまな申請業務の見直しを目的に、効率化を検討
長崎大学でkintone導入のきっかけとなったのは、事務局内からの「業務負担を軽減したい」という相談でした。資料作成や教員対応に追われる状況を改善するため、kintoneおよびToyokumo kintoneAppの導入を検討することになりました。
まず初めに取り組んだのが、学内外の講堂利用の予約管理。学内では「サイボウズOffice」を使って施設予約システムを運用していましたが、学内と学外で対応方法が異なっていたのです。そのため、学外の方が講堂の予約状況を確認するには電話での問い合わせが必要で、この対応が職員の業務負担となっていました。
▲kintone導入前の講堂予約のフロー
また、教員の兼業申請など多くの業務についても、紙やExcelでの管理が中心だったため、効率化をする必要があり、講堂予約や兼業申請などの申請業務を効率化するツールの導入検討を開始しました。
「以前、施設予約のシステム開発を外注した際、高額な初期費用および年間保守料が発生したため、選定基準としてシステム導入・運用におけるコスト効率を重視するようになりました」(香椎氏)
こうした背景から、kintone連携サービス活用による内製化が、コスト削減、迅速なカスタマイズ、現場ニーズへの即応性といった点で大きなメリットをもたらすと+判断。パートナー企業からのToyokumo kintoneAppの紹介も、ツール選定を後押しする要因となりました。
今後に向けた、導入したサービスのライセンスを最大限活用する取り組みも進めています。
「ライセンスを有効活用するために『他にアプリ開発の需要はないか』と学内に聞いたところ、兼業申請システムの需要が見つかりました。このシステムの効果が予想以上に高く、兼業申請処理の時間短縮だけでも導入した全製品の費用を回収できるほどでした。そのため、さらに活用範囲を広げています」(香椎氏)
兼業申請を年間約1,800時間短縮!さまざまな申請業務を効率化した活用事例
大学に所属する教員は学外でも講師や講演といった兼業をすることは珍しくありません。実は教員が学外で兼業をするための申請許可業務は大学の事務職員が行っているケースが一般的です。長崎大学様がkintoneおよびToyokumo kintoneAppを導入した結果、その兼業申請業務が大幅に効率化。書類での申請から『FormBridge』や『kViewer』などを連携したWeb上でのフォーム申請に切り替えることで、兼業申請の業務時間を年間約1,800時間も短縮することに成功しました。
導入前の状況について、香椎氏は振り返ります。
「4月頭からの兼業申請が2月に入ると一気に始まり、申請書と裏付け資料をセットにして決裁を回していたそうです。その上で訂正事項があれば診療科に戻したり、医学部と病院で間違って届いたものを送り直したりと、非常に煩雑な作業が全て紙で行われていました」(香椎氏)
▲kintone導入前後の兼業申請業務の書類。下段がkintone導入前、上段がkintone導入後
なお、この兼業申請システムの導入は、他の大学からも注目を集めています。兼業申請をシステム化しているのは、当時は国内でも数えるほどであり、大半の大学はWord、Excelでの対応とのこと。その状況の中、長崎大学の取り組みが教育関連の業界紙である文教ニュースに掲載されたこともあり、その後、興味を持った他大学からのアクセスが増加しました。
▲kintone・Toyokumo kintoneApp導入後の兼業申請フロー
また、国立大学病院は研究件数や企業からの受領金額などを公表する必要があります。これまで毎年各診療科などに件数報告を依頼していましたが、kintoneによりそれが不要になり、診療科の担当事務の方々の業務負担も大幅に軽減されました。データがシステムに蓄積されることで、これまで手作業で行っていた集計作業が自動化され、年間の報告業務の負担が大幅に軽減されています。兼業申請だけでなく、あらゆる申請業務にToyokumo +kintoneAPPを活用することで、ペーパーレス化と大幅な業務時間の削減を実現しました。
兼業申請システムは紙ベースの申請から電子化することで、申請者や事務担当者の負担が大幅に軽減され、プロセス全体の迅速化につながりました。この成功事例により、他の業務プロセスでもToyokumo kintoneAppの導入が進められることになりました。
書類での申請をフォームにシフト(FormBridge × kViewer × kMailer × PrintCreater)
長崎大学では、兼業申請、講堂予約、寄附金申込、在宅勤務申請、学生団体設立届など多数の申請作業が行われています。これらは従来、紙で申請を受け取り、承認や修正、そしてその内容をExcelへ転記する、といった工程で処理されており、多くの手間がかかっていました。
これらの申請業務を効率化するため、『FormBridge』、『kViewer』、『kMailer』を組み合わせた予約や申込、予約状況の可視化ができるアプリケーションを独自開発しました。『FormBridge』で書類申請をフォーム化し、申請データを基に予約状況を『kViewer』で可視化。さらに申請したユーザーには『kMailer』で申請内容をメールで通知する仕組みを構築しました。
▲FormBridgeを使って作成した申請フォーム
申請業務の効率化自体も大きなメリットとなりましたが、書類申請からフォーム申請への切り替えにより、Web上で24時間いつでも申請できるようになり、学内外のユーザー利便性も大幅に向上しています。
学生団体設立願いの電子化や在宅勤務申請システム、寄附金の申込システムなども同様に効率化されました。学生団体設立願いについて香椎氏は次のように説明します。
「学生がサークル活動のための団体設立願いを提出する際、従来は指導教員の押印をもらって紙で提出していましたが、これをオンラインに切り替えました。学生は窓口に行く必要がなくなり、ウェブから申請できるようになりました。マイページビューで団体の人数変更なども行えるようにしたことで、学生側の利便性も間違いなく向上しています」(香椎氏)
在宅勤務申請システムも、部署ごとに毎月必要な報告書類をFormBridgeを活用してシステム化。これにより定期的な報告業務の効率が飛躍的に向上しました。また、寄附金の申込み管理も一部局を皮切りに電子化が進んでいます。
「寄附金については、大学に寄附をするとき、これまで紙で受け付けていましたが、一部局で新しくシステムを導入しました。FormBridgeで申し込みを受け付け、そのデータがkintoneに自動的に蓄積される仕組みです。診療科の秘書や事務員が、どのような寄附があるのかをkViewerで確認できるようになり、寄附情報の可視化も実現しています」(香椎氏)
現在は更に発展的な取り組みとして、海外との研究交流に関わる輸出管理システムの開発も進められています。
「輸出管理は非常に複雑です。大学からものを海外に輸出するときは、輸出の事前チェックシートで、どこの国にどんなものを持っていくのか、人が行くのかものを送るのかといった情報や、輸出規制リストなど多くのチェックがあります。大学の所属者がものを輸出する際は、責任者が大学となるため、各部局の輸出を一元管理する仕組みが必要でした」(香椎氏)
▲現在開発中の兼業申請システムの全体図
現在開発中のシステムにより、これまで紙で蓄積していた情報を電子化し、効率的な管理が可能になる見込みです。これは、『FormBridge』や『kViewer』などで収集したデータをkintoneに蓄積し、『PrintCreator』を活用して業務効率化をさらに進めています。『PrintCreator』では兼業申請の許可証をはじめ、各種申請業務の控えや通知書、報告書といった定型帳票をPDF形式で自動生成することで、手作業による帳票作成業務を撤廃し、大幅な時間短縮と人的ミスの削減を実現しました。また、生成された帳票はkintoneに電子データとして紐づけて保存・管理できるため、紙の書類保管も不要になりました。
サイロ化した部署間データを連携!スムーズな情報共有で全学的なデータ活用を目指す
長崎大学では、学内に多数の業務システムが個別に存在し、データが部署ごとに分断(サイロ化)している課題がありました。
「大学では各部署がそれぞれ独自のシステムを使っています。担当部署以外はその情報を見ることができないため、必要なときは電話で問い合わせるしかありませんでした。しかし、kintoneとToyokumo kintoneAppをうまく活用することで、担当外の部署でもデータを閲覧できるようになりました。さらにMicrosoft Power BIとの連携でデータ分析も簡単になりました」(香椎氏)
▲Toyokumo kintoneAppを活用しているさまざまなアプリ
最後に、Toyokumo kintoneAppの導入効果について、香椎氏は次のように評価しています。
「Toyokumo kintoneAppの導入により、年間1,800時間の業務時間削減をはじめ、学内の様々な申請業務が効率化されました。それだけでなく、サーバー構築などの専門知識がなくても使えることも、Toyokumo kintoneAppの大きな魅力です。システムを直接担当していない人間でも、画面を見れば操作方法がわかるため、チーム全体で対応できるのは非常にメリットだと感じています。今後も部署間の情報共有を促進し、複雑になりがちな大学業務の効率化を進めていく予定です」(香椎氏)
記事公開日:2025年6月9日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります