庁内外の情報共有をkintone x トヨクモkintone連携サービスで効率化!行政DXを推進する大阪府庁の活用事例


新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、業務のデジタルシフトが急務となった大阪府は、kintoneとトヨクモkintone連携サービスを導入しました。この取り組みにより、紙ベースで行われていた業務のデジタル化を進め、オンラインでの申請受付や審査といった各種申請業務における効率化と利便性向上を図りました。

その後、大阪府はさらなる行政DXを目指し、kintoneとトヨクモのkintone連携サービスを本格的に導入。その結果、庁内外の情報共有フローが効率化され、職員の負担軽減に加えて、府民サービスの向上にも繋がっています。
本記事では、大阪府庁 行政DX推進課 寺岡新司氏、辻村真輝氏、髙野宏也氏、公園課 山田光俊氏、平川日夏乃氏よりお話を伺いました。

▲(左から)大阪府行政DX推進課 髙野様、寺岡様、辻村様、公園課 山田様、平川様

コロナ禍を契機にデジタル化が急務となり、kintoneを活用

これまで大阪府では、ExcelやWordを使用してデータを集約・管理し、それらを印刷して書類を作成するのが一般的でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、行政業務のデジタル化と、業務効率化が急務となりました。
 
そこで、2020年にサイボウズのkintoneを導入。合わせて、サイボウズのパートナーであるトヨクモのkintone連携サービスのうち、FormBridge、PrintCreator、kViewerの利用を開始しました。
 
利用開始当初に取り組んだのは、休業要請支援金に関する業務の効率化です。外出が制限される状況下で、申請者が窓口に訪れなくても申請を完了できるよう、FormBridgeでオンライン申請フォームを作成しました。
 
これにより、申請者はオンラインで申請が完了し、送信された情報は自動でkintoneへ集約されるため、担当職員によるExcel等への取りまとめ作業が不要になりました。さらに、PrintCreatorによってワンクリックで必要書類を出力できるようになり、書類の作成時間も大幅に削減されました。
 
「休業支援金に関する業務は、短期間で多くの申請を処理する必要があり、従来の方法では対応が困難でした。しかし、オンラインフォームの導入とデータの自動集約によって、職員の負担が軽減され、より迅速かつ正確に支援金を届けることが可能になりました。」(辻村氏)
 
「当時はコロナ禍の影響で対面でのやり取りが難しい状況でした。しかし、kintoneとトヨクモのkintone連携サービスを導入したことで、職員がデータによる審査を円滑に行えるようになり、業務効率が大きく向上しました。また、紙とデータのどちらで申請するかを状況に応じて選べる仕組みを整えたことで、府民の方々の選択肢が広がりました」(寺岡氏)
 

行政DXを加速させるべく本格導入へ。kintoneとトヨクモ製品の連携率は約7割!

大阪府では、専門知識がなくても、迅速に業務システムを構築できるkintoneの操作性や使い勝手の良さに魅力を感じ、kintoneおよびトヨクモkintone連携サービスの本格的な利用がスタートしました。
 
大阪府では、これまで各担当者がAccessを使用して対応していた業務をkintoneへ移行するなど、従来紙やExcelを使って行っていた業務の効率化を推進しています。
 
「Accessはローカル環境に依存しており、運用方法が担当者ごとに異なるため、属人化が起きやすいという課題があります。一方、kintoneはクラウドベースで情報の透明性が高く、直感的で簡単に操作できる点が特長です。情報が一元管理されることで引き継ぎがスムーズに行え、毎年人事異動がある自治体の運用にも適しています。さらに、トヨクモkintone連携サービスと組み合わせることで柔軟なカスタマイズが可能となり、府庁内でkintoneを活用するケースのほとんどでトヨクモkintone連携サービスを利用しています」(寺岡氏)
 
そして現在、kintoneとトヨクモkintone連携サービスは、府庁内の約3分の1の部署で導入されるまでに普及しているそうです。この普及の背景には、サイボウズ主催の自治体向け勉強会の積極的な周知や、デジタル化を求める部局のニーズを丁寧にヒアリングするなど、行政DX推進課の熱心な情報収集と取り組みがあります。
 
さらに、導入を検討する部署にはkintoneでのアプリ作成・運用を試すことができる環境を提供することで、利用開始時のハードルを下げ、kintoneやトヨクモkintone連携サービスによる業務改善を後押ししています。

職員の業務負荷軽減と府民サービス向上を実現!トヨクモkintone連携サービスの活用事例3選

kintoneとトヨクモkintone連携サービスにより、行政DXを推進している大阪府。職員の負荷軽減と、府民サービスの向上に成功している活用事例を紹介します。

活用事例①府営公園のイベント申請・編集(FormBridge・kViewer)

<導入前>
大阪府営公園で開催されるイベントは、公園課が各公園を管理する指定管理者に対して、イベント名や開催日時などの必要情報を記入するためのシートをExcelで作成し、メールで送付していました。

▲当時使用していたExcelのシート

 指定管理者はシートを受け取った後、イベント情報を入力して保存し、公園課に返信。その後、公園課の担当者が手動で管理表に転記・集計するという手順が取られていました。
 
しかし、この方法では指定管理者と公園課の双方に手間と時間がかかる上、登録後に情報の変更があった場合、公園課の担当者がその都度手動で対応する必要があり、非効率的な状況だったと言います。
 
<導入後>
そこで、従来のExcelによる管理を廃止し、FormBridgeを活用した申請システムへ移行。これにより、指定管理者はイベントの登録作業がWebフォーム上で完結できるようになりました。入力されたイベント情報はkintoneに自動で集約されるため、公園課での取りまとめ作業も不要となり、管理の手間が大幅に軽減されました。
 

▲FormBridgeで作成したイベント登録フォーム

 また、FormBridgeで作成した登録フォームをkViewerのMyページビューと連携することで、指定管理者自身が登録情報を編集できるようになりました。
 

▲kViewerによって公開されているイベント登録一覧画面

▲該当するレコードをクリックし、詳細画面右上の鉛筆マークから登録情報を編集できる

▲編集用のフォームには現在登録されている情報が表示されるため、変更したい項目のみ上書きをすれば編集作業が完了する

 平川氏は、FormBridgeのフォームやkViewerのビューにメールアドレスでアクセス制限をかけられる「Toyokumo kintoneApp認証(※)」が便利だと話します。
 
「これまでは、公園名や住所といった基本情報を登録する度に入力しなければいけませんでした。しかし、指定管理者のメールアドレスと各公園の基本情報をあらかじめkintone上のマスタに登録しておくことで、Toyokumo kintoneApp認証を使ってログインすれば、指定管理者の基本情報が初期値として自動表示されるようになりました。その結果、フォームの記入時間が短縮され、よりスムーズに登録いただけるようになりました」(平川氏)
 
※トヨクモkintone連携サービスにログインするための認証システムのこと。Toyokumo kintoneApp認証について、詳しくはこちらをご参照ください。

活用事例②府営公園イベントカレンダー(kViewer)

府営公園で開催されるイベント情報は、各公園の指定管理者が独自に公開していたため、情報が分散していました。公園課ではExcelを使って情報を一元化しようと試みていましたが、検索性が低く、府民にとって使いにくい状況だったと言います。
 
そこで、イベント情報をkViewerで公開することにしました。府営公園の情報をGoogleマップ上でリスト化した「OSAKAパークマップ」にkViewerで作成したイベントカレンダーのURLを掲載し、利用者が公園で行われているイベントを簡単に確認できる仕組みを整えています。

▲Googleマップの府営公園リスト「OSAKAパークマップ」に、kViewerで作成したイベントカレンダーのURLを設置

 イベントカレンダーは、キーワード検索、地域名検索に対応している他、当日に開催されるイベント情報をまとめた「本日の開催イベント」ページも設置することで、目的のイベントを簡単に見つけられるよう工夫しています。
 

▲kViewerで作成したイベントカレンダー

▲kViewerで作成した「本日の開催イベント」ページ

 2024年12月現在、kViewerによる「イベントカレンダー」は多数表示されており、多くの府民にとって欠かせない存在と言えるでしょう。

活用事例③府内の支援事業に関するFAQページ(kViewer)

大阪府では、物価高騰による家計負担の増加を受けて、特に影響を受けやすい子育て世帯を支援するため、すべての子どもたちに米や食料品を給付する「大阪府子ども食費支援事業」を実施しました(※現在は募集していません)。

通常、「よくある質問(FAQ)」は、ExcelやWord、PDFで提供されていることが多いとのことです。しかしながら、視認性が低く、検索しても必要な情報が見つかりにくいという課題がありました。そこで本事業では、kViewerを用いてFAQページを作成し、申請者の利便性向上に努めました。

▲kViewerで作成していた食費支援業務申請のFAQページ(現在は公開されていません)

 FAQページにはキーワード検索機能を設けて、必要な情報へスムーズにアクセスできるようにしています。
「kintoneとトヨクモkintone連携サービスを活用すれば、情報量が多いFAQページも見やすく、簡単に構築できます。このようなFAQページによってメールや電話での問い合わせ数が減少すれば、職員の負荷軽減も十分に期待できます」(寺岡氏)

他にも!庁内で活躍するトヨクモkintone連携サービス

他にも、大阪府ではkintoneやトヨクモkintone連携サービスを活用し、さまざまな業務の効率化と府民サービスの向上を実現しています。例えば、都市整備部では、住宅・建築物の省エネ関連補助金の情報をkViewerで検索可能なページを作成し、より使いやすい仕組みを整備。また、これまで紙台帳で管理していた公用車運転日誌をFormBridgeを使ったオンライン報告へと移行中です。
 
 
さらに、商工労働部では、電話やメールで行っていた労働相談を、オンラインでも受付できるようFormBridgeでフォームを作成。府民が簡単に相談を申し込める環境を提供しています。これらの取り組みを通じて、大阪府は業務の効率化だけでなく、府民との接点強化にも力を入れています。
 
このようにkintoneやトヨクモkintone連携サービスが積極的に活用されている背景にあるのは、庁内向けの案内ページです。
 
このページでは、各システムの具体的な機能や利用事例、導入手順などが紹介されており、業務の効率化や情報共有を円滑に進めるためのサポートツールとして活用されています。
 

▲庁内向けに、kintoneの研修案内や動画、資料を公開している

 

▲トヨクモkintone連携サービスに関する情報をまとめたページ。トヨクモkintone連携サービスを初めて扱う職員にとっても分かりやすいよう、各製品の紹介動画を掲載している

業務改善を進めるとともに、府民サービスの向上に取り組んでいきたい

kintoneとトヨクモkintone連携サービスを活用し、業務効率化と府民サービスの向上を実現してきた大阪府。トヨクモkintone連携サービスの有用性について、寺岡氏は次のように話します。
 
「府民サービスという多くの人に向けた仕組みを提供するうえで、kintoneアカウントがなくても情報を登録・閲覧できるFormBridgeやkViewerは欠かせない存在です。今後も庁内で利用を促進し、様々な場面で活用していきたいです」(寺岡氏)
 
また、山田氏は民間事業者と行政が共通で利用できるシステムの意義を高く評価しています。
 
「民間事業者である指定管理者と大阪府が共通で利用できるシステムの導入により、業務効率化が大幅に進みました。今回のように情報が一元化され、必要なデータがすぐに取り出せる仕組みは非常に有意義だと感じます」(山田氏)
 
最後に、平川氏は今後の展望について次のように話します。
 
「今後は、kViewerを活用して公園のイベント情報をさらに充実させながら、より見やすく使いやすいカレンダーを目指して、継続的な改善を進めていきたいと考えています」(平川氏)
 
 

記事公開日:2025年1月30日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります