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株式会社フラットエージェンシー様

不動産業界の「紙ベース」な業務フロー改善!入居者 x 440社の賃貸仲介業者 x 管理会社の相互利益を実現したkintone活用法



 株式会社フラットエージェンシーは、1974年の創業以来、賃貸・不動産仲介売買からまちづくりにかかわるプロジェクトまで、京都で多角的な不動産サービスを提供しています。地域に根ざした活動を通じて住みやすく魅力的なまちづくりに貢献している不動産会社です。

同社ではマンスリーマンションの予約状況のリアルタイム反映や、お問い合わせへの短時間対応を実現すべく2013年にkintoneを導入。社内業務にとどまらず、入居者や賃貸仲介業者といった、社外の方とのやりとりが多く発生する業務特有のミス削減やフロー効率化を目指し、2016年よりトヨクモが提供するkintone連携サービスを導入いただいております。

なかでも、440社の賃貸仲介業者が利用中の「入居者情報共有ダッシュボード」の構築は不動産業界ならではの画期的な活用アイディアです。本記事では、従来の業務課題に対して連携ツールをどのようにカスタマイズ・活用することで解決したのか、株式会社フラットエージェンシーの顧問・中川桂一氏と経営企画部課長・上田和代氏と本店営業部副店長・小寺教誠氏より伺いました。


アナログなマンスリーマンション予約管理。kintoneと連携しリアルタイム反映の実現


「kintoneの導入は2013年です。その頃はExcelに色を付けたガントチャートとAccessを使ってマンスリーマンションの予約管理をしていたのですが、数年で150室から300室まで増加し、管理が大変になりました」

当時のExcelによる空室管理が限界を迎えていたことに、中川氏と上田氏は危機感を抱いていました。Excelファイルは複数人が同時に更新することができないため、空室状況は社員間で確認しながら更新する必要がありました。アナログな管理方法だったため、ダブルブッキングや、色付けを忘れてしまい、お客様対応に時間がかかってしまうといった課題もあり、業務改善を図るためにkintoneの導入を決定しました。

社内にとどまらず、社外の人とのやりとりでも「手入力」をなくすためにトヨクモのkintone連携サービスを導入


 社内におけるデータ管理や共有に関する課題はkintoneによって自動化が進みました。一方で、入居を希望するお客様や賃貸仲介業者といった、社外の関係者とのやりとりは依然として紙ベースで行われており、紙で回収したデータの集計や登録には手入力がどうしても発生するという点に課題がありました。

社外から共有される各種データも自動でkintoneのマスタデータに登録されるような仕組みを構築したいと考え、2016年よりトヨクモのkintone連携サービスを導入いただいております。

「それぞれのツールを連携すればするほど使いやすいと感じたので、トヨクモ以外のツールは導入には至りませんでした。唯一PrintCreatorは他社比較を行ったものの、UIの操作性が飛び抜けてよかったため、迷うことなくトヨクモを選びました。」(上田氏)


FormBridge×kViewer×Toyokumo kintoneApp認証機能を連携し、440社の賃貸仲介会社との「情報共有ダッシュボード」を構築


 不動産業界特有の業務フロー改善として特筆すべき事例が「入居者の情報共有ダッシュボード」の構築になります。FormBridgeとkViewer、Toyokumo kintoneApp認証機能をフル活用いただいております。

数多くある業務の中でも、「入居審査に伴う一連の確認業務」はコミュニケーションコストやアナログな確認作業、データの手入力が発生します。

賃貸物件への入居を希望する場合、入居審査に必要な賃貸入居申込書の記入と身分証明書の提出などが必要となります。これまでの入居希望者は必要事項を手書きで記載し、身分証明書はスキャンした画像を印刷し、賃貸仲介会社にFAXで提出していました。しかし、これらの方法は入居希望者に対し記入と印刷の手間がありました。

さらに、FAXを介して賃貸仲介会社に届いた手書きの申込書は、記載漏れといった不備やFAX送信による字潰れがしばしば見られました。身分証明書も同様に、FAXで送信することで写真が黒塗りのようになったり不鮮明な状態になることも多く、確認作業に時間を取られたり、場合によっては修正や再提出依頼が発生し、入居審査にかかる時間が伸びてしまいました。もちろん、これらの対応は賃貸仲介会社の営業時間内のみで、営業時間外は提出書類の受付や審査の進行ができません。

また、管理会社(=フラットエージェンシー社)は入居審査の進捗状況を把握したり、入居者情報を自社のデータベースに登録する必要があるため、書類の不備などで進行に遅れが出ている場合は特に電話やメールで逐一賃貸仲介会社とやりとりを行い、賃貸仲介会社から入居希望者の記載書類が共有され次第、その内容を手入力でkintoneへ登録する必要がありました。

そこで、賃貸入居申込書および身分証明書の提出をFormBridgeで作成したフォームに置き換え、オンライン完結で入居希望者は24時間いつでも回答と提出ができるようにしました。フォームの回答項目を必須設定にすることで記入漏れを防ぎ、スマートフォンで撮影した鮮明な身分証明書の写真もそのまま添付可能となりました。

FormBridgeのフォームに入力された入居者情報はフラットエージェンシー社のkintone内にマスタデータとして直接登録されるようになり、手入力の手間をなくしました。さらに、入居者がフォームに記載した各情報を、賃貸仲介会社もダッシュボードで確認できるようにkViewerで3つのリストビューを用意。この時、各賃貸仲介会社が担当している入居者情報のみを表示できるよう、Toyokumo kintoneApp認証機能を利用しました。



kViewerのリストビュー機能を使用したダッシュボード


Toyokumo kintoneApp認証機能でログインできるメールアドレスを設定するためには「管理者」として仲介業者のメールアドレスを一件ずつ登録、もしくはCSVで一括登録する必要がありますが、フラットエージェンシー社ではあらかじめ賃貸仲介会社のメールアドレスをはじめとする企業情報をkintoneのマスタアプリに登録し、管理していました。そこで、マスタアプリと認証機能を連携し、マスタアプリ上の情報に応じてダッシュボードの閲覧制限設定も自動で反映されるようにしました。


賃貸仲介会社の情報を管理しているkintoneマスタアプリ


 賃貸仲介会社がダッシュボードへのログイン画面でメールアドレスを入力すれば、メールアドレス情報に紐づけられて管理されている入居者情報のみを抽出して表示するというセキュアな運用に成功しています。

賃貸仲介会社は入居者の対応状況をダッシュボード上ですぐ確認できるようになり、差し戻しの対応も減りました。そして、管理会社側でもリアルタイムで入居者の対応状況を確認できるようになったため、賃貸仲介会社との間で書類の共有や、メールや電話での進捗確認の工数をなくすことに成功しました。

PrintCreatorでインボイス対応の帳票作成を実現し、kMailerで郵送書類を電子化


 フラットエージェンシー社は、PrintCreatorやkMailerも導入いただくことで、インボイスに対応した帳票作成の一元化や、郵送対応が必要だった書類のデジタル化も推進しました。

これまではkintone内で見積書、請求書、領収書それぞれを出力するアプリを作成していました。しかし、基幹システム出力の帳票とkintone出力の帳票が数多く混在しており、今後全ての帳票をkintoneで出力できるよう整理することが課題となっていました。さらに、23年10月より導入されたインボイス制度により、登録番号を決まった書式で出力する手間も増えました。マスタデータから各帳票を切り分けて出せるような一元管理のためにPrintCreatorを導入いただくことで、スムーズな帳票発行を実現しました。


インボイスに対応した請求書の出力に対応


一例として社内の経費申請でも活用されております。各社員がkintoneアプリ上にレシート写真や経費情報を登録すれば、PrintCreatorから「経費精算書」の形式に出力と印刷までボタンひとつでできる仕組みになっており、総務への提出がスムーズとなっています。

kintoneのアプリ上で経費データを登録する



kintoneマスタデータをもとにPrintCreatorで出力した経費精算書。写真挿入も可


また、「退去精算書」と呼ばれる書類は従来全て郵送で対応していました。B4サイズで特殊な折り方をして封筒に入れて送る必要があり、一つひとつ手作業で対応しなければいけないため、2〜3月の繁忙期では送付完了までに1ヶ月半かかっていました。

退去が重なる2〜3月は対応数が増え、時間がかかる


そこで、kMailerを導入し、直接kintone上にある退去精算書のデータをメールで送付できるようにしました。結果、繁忙期であっても1ヶ月以内にはデータを送付できるようになりました。

kintoneに登録されていたデータをそのまま添付できるようになった


kMailerではメールの文面もテンプレ登録できるため、スムーズに書類の送付が可能


なお、万が一に備えてkBackupもあわせて導入いただくことで、安心してkintoneとトヨクモの連携ツールを全社的に活用いただいております。


外国人向けの入居申込書のフォーム実装やDataCollectの新たな導入でさらなる改善を


 社内の課題に合わせてkintoneや連携ツールをカスタマイズし、全社的な導入と浸透を進めたコツとして、中川氏は「まずは小さな部署や業務で試験的に運用し、成功体験を作るようにしました。そこでの実績を根拠に『kintoneを活用した方が便利だよ』とどんどん社内導入を推進しました」と振り返ります。

また、上田氏は「kintoneや連携ツールの新たな機能を導入することで、業務フローが大きく変わることが想定される時は、社内研修やマニュアル共有といったフォローも実施しています」と、ハード面だけでなくソフト面の整備も重視されていました。

実際に社内で共有されている「経費申請」のマニュアル。操作画面と照らし合わせながら記入内容を確認できる


マニュアルだけでなく、社内研修も実施することで現場での浸透を促進


 喫緊で取り組みたい業務改善として、小寺氏より「外国人用入居者申し込みのフォームを実装したいですね」と回答いただきました。外国人の方はFAXの使い方がわからなかったり、書類の記載内容を正確に把握することが難しいケースも多いようです。また、記載いただいた名前の正しい読み方がわからない、といった外国人ならではのトラブルもしばしば発生することも。FormBridgeには言語変換機能もあるため、外国人ならではのフォーム項目を追加した上で用意を進めており、コミュニケーションコスト削減を目指しています。

さらに、社内で利用中のkintoneアプリの数が増えているため、データの整理も優先度高めに解決する必要があるそうです。中川氏は「近日中にDataCollectを導入し、xlookup関数を活用することでデータの集計を簡素化、整理したい」と、抜本的な社内データ整理へ意欲的な姿勢を見せました。

フラットエージェンシー社の業務改善に終わりはなく、現在も新たな課題解決のための手段を模索し続けています。

記事公開日:2024年2月22日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります