会社の文化を変える力を持つkintone+トヨクモで成し遂げた業務改善の軌跡
2023年に株式会社三重電子計算センターから商号を変更し、新たにスタートを切った株式会社ミエデン。自治体や民間企業・医療機関などに向けたシステム開発やソリューション提供を手掛けており、自社のデータセンターを活用したクラウドサービスやAI・IoTなどの最先端技術を駆使したサービス展開に向けて注力しています。
今回は、「kintone」と「FormBridge」「PrintCreator」「kViewer」「kMailer」「DataCollect」を組み合わせて業務のデジタル化を成し遂げた取り組みについて、株式会社ミエデン 経営企画本部 情報戦略部 山田 駿氏にお話を伺いました。
経営企画本部 情報戦略部 山田 駿氏
Office アプリケーションや紙が業務の中心、情報共有のあり方に課題あり
もともと同社では、社内の情報基盤を整備する情報システム部門が独立しておらず、総務部門が主にその役目を担っており、専門的なシステム関連の環境整備や運用は顧客向けにサービス提供するチームのメンバーが実質的な対応を行っていました。そのため、情報共有のための基盤が十分に整備されておらず、多くの業務がMicrosoft WordやExcelなどを用いてメールで情報をやり取りし、申請業務なども紙に出力したものを回していくといった、アナログなアプローチで業務が行われていました。
当初営業に在籍していた山田氏が、現場として情報共有に課題を持っていたと時を同じくして、外部からジョインした経営幹部から営業部門の情報共有や商談プロセスの電子化が進んでいない現状についての指摘があったのです。そこで、社内横断的に利用できる情報基盤の整備に関するプロジェクトがスタートしたのが、kintone導入のきっかけでした。
「当初は経営層が利用した経験のあるSalesforceを中心に業務基盤の導入が検討されましたが、紙に慣れている現場にSalesforceは正直ハードルが高い。しかもカスタマイズのたびに多くのコストが発生することが懸念されました。そこで、Salesforceに準じる仕組みとして、当時盛んにCMが流れていたkintoneに白羽の矢が立ったのです」と山田氏は当時を振り返ります。
営業部内でも若手の山田氏がプロジェクトメンバーとして参画し、プラットフォームとしてkintoneを活用し、日々の業務に役立つアプリケーション開発を行うことになったのです。
紙文化が根付く現場にkintoneを浸透させるために欠かせないPrintCreator
プロジェクトが始まった当初は、kintone標準の機能で業務アプリの開発がスタートしましたが、早い段階から現場へスムーズに展開するためには紙の存在が欠かせないと判断したと言います。
「クラウド上で情報共有するkintoneは、当然ですが印刷を前提にしていません。当時は、Excelで管理している案件情報も、会議の際には出力して打ち合わせするほどでした。おそらく印刷できないと多くのメンバーが手を挙げてくれないのではと役員とも話をしたうえで、印刷できる環境を早い段階から検討する必要がありました」と山田氏。そこで注目したのが、サイボウズが開催していたイベントで見かけた、トヨクモのPrintCreatorでした。
また、当初から営業部門の予実管理や在庫管理といった業務アプリの展開を経営幹部がイメージしていたこともあり、kintoneの標準機能では難しいアプリ間の情報がうまく集計できる仕組みも同時に検討を進めていました。このアプリ間の情報集計などに役立つプラグインとして同展示会で目にしたDataCollectが、まさに同社が求めていたプラグインだったのです。
そこでkintone導入からわずか1ヶ月後には、PrintCreatorとDataCollectを契約し、すぐに自社の環境へ適用することに。その後、社内の申請業務をkintoneに変えていく機運が高まるなか、社外からFAXで申請が行われるデータセンター見学の申請業務に対して、Webフォームから申請を受け付け、申請状況を社外に知らせる仕組みとしてFormBridgeとkViewerを採用。そして、同社が手掛けるクラウドサービスに対する請求書を顧客に送る仕組みとして、kMailerが採用されることになったのです。
トヨクモ提供の5つのkintone連携サービス、会社の文化を変える大きな存在に
kintoneを契約してからおよそ2年が経過し、現在は570を超えるkintoneアプリが構築されています。アプリ作成の権限は全員が持っているものの、自由に開発できる"アプリ作成トライの場"と呼ばれる特定のスペースを用意し、誰でも試行錯誤できる環境が提供されています。テストとして作成されたアプリを本番運用する場合は、情報戦略部の承認を経たうえで展開しています。
ー 在庫管理(DataCollectの導入)
DataCollectについては、従来紙の台帳で管理していた切手や収入印紙の在庫状況を管理する際に用いられており、在庫情報が記録されているアプリと切手などの入出庫を記録するアプリの数字を集計することで、正確な在庫管理を実現しています。
参考ページ|「kintoneで在庫引当|有効在庫数を常に最新にする方法」
顧客に配布するノベルティに関する在庫管理にもDataCollectが活用されており、kintoneにて申請したものが承認された段階で、ノベルティの在庫が引き当てられる仕組みとなっています。また、期初に建てた予算管理を行う予算アプリと日々の実績を記録する実績アプリを集計し予実管理を行っており、その結果をkViewerにてポータル画面上に表示することで、日々の予算達成状況が把握できるようになっています。
ー 予実管理(kViewerの導入)
kViewerについては、各種係数が示された6つのビューを1つのポータル画面に表現するために、プロフェッショナルコースを契約しました。各部門の売上グラフや予実管理などの数字は、各アプリ内にある数字をDataCollectにて集計し、kintoneのポータル画面上で簡単に可視化できるような仕組みを構築中です。
また、同社が手掛ける介護事業の現場で働く、kintoneアカウントを持たないパートメンバーに、掲示板アプリ内の情報を閲覧できる用意するためにもkViewerが生かされています。「当初はパートの方にもkintoneライセンスを付与していましたが、掲示板閲覧だけのためにアクセス頻度が少なく、パスワードが覚えられないという問い合わせが殺到しました。そこで、掲示板内の必要な情報だけをフィルタし、事務所に設置されたPC画面を使ってkViewerにて情報を見てもらえるようにしています」と山田氏。
参考ページ|「予実管理とは?目的や苦労する点に加えて効率化の方法も徹底解説」
ー 帳票出力業務(PrintCreatorの導入)
PrintCreatorについては、社長向けの決裁書類をはじめ、駐車場に関する利用申請ワークフローが特定ステータスになった段階で出力ボタンが表示され、駐車許可証が印刷できるようになっています。「最初から出力ボタンを表示させたくなかったため、簡単にカスタマイズを行っています。
※カスタマイズは、サポート対象外です
特定のステータスになった段階で、駐車許可証を出力する運用にしています。
開発経験のない私でも、トヨクモが紹介しているブログ記事を見て簡単にコードを書き換えることができました」と山田氏。また、社内向けのイベントへの参加票にQRコードをPrintCreatorにて出力しており、当日は受付でスマートフォン画面からQRコードをかざすだけで参加できる仕組みも実装しています。
参考ページ|【kintoneでイベント管理をする方法をご紹介!】参加証発行〜参加者情報の管理まで
PrintCreatorで出力した参加票です。
ー 申請業務(FormBridgeの導入)
FormBridgeについては、データセンター見学の依頼業務に活用しているほか、同社が展開する電子成果品を長期間にわたって保管可能なクラウドサービス「Safe Storage」における、問い合わせ受付ページや見積依頼ページに活用されています。
FormBridgeで作成する問い合わせ / 見積作成フォームです。
ー 請求書送付業務(kMailerの導入)
kMailerについては、同社提供のクラウドサービスの請求書を契約者に送付する際に利用されており、kintone上で作成された請求書をメールにて一括送付できる形にしています。毎月100件前後の請求書送付の作業を効率化することに成功しているそうです。紙での郵送を希望する場合は、PrintCreatorにて出力しています。
トヨクモのプラグインを柔軟に連携させることで、例えば見積作成依頼にFormBridge、依頼状況を外部に示すためにkViewer、そして契約後の請求書郵送ではPrintCreator及びメール送付ではkMailer、日々の予実管理にDataCollectといった、実際の見積から請求含めた営業プロセスをうまく電子化することに成功しています。
今回kintone及び各種プラグインをうまく活用したことで、6000時間の業務効率化を実現しただけでなく、古いワークフローシステムを刷新できたことで年間300万円の経費削減も達成しています。ただし、その効果は定量的なものだけにとどまりません。エンジニアでなくともある程度の業務システムが構築できる点が最も大きな効果だと山田氏は言及します。
「kintone自体もノーコード・ローコード色が強いですが、トヨクモはさらにその思考が強い。今回紹介したアプリの多くは私が関与せずに作り上げたものばかりで、まさに会社の文化を変えてしまう力があるといっても過言ではありません」と高く評価します。特にバックオフィス業務の担い手が不足していたことで、新たなサービスリリースが難しい状況に追い込まれたこともあったと当時を振り返りますが、kintoneとトヨクモをはじめとした連携サービスを駆使することで、自動化を図ることができたとその効果を実感しています。
また、Excelにすら触ってこなかった文系の新卒2年目の若手が、トヨクモの提供するブログ記事やヘルプ含めたコンテンツを頼りに構築できた事例などから、知識やスキルがないメンバーでもやろうと思ったらできることを実感してもらえた点に一番希望を感じていると言及します。「SNSを通じてトヨクモから発信される便利な使い方情報などはとても参考になります。kintoneのエコシステム全体にも言えることですが、特にトヨクモの公式ページは欲しい情報が詰まっていて、問題点も自分で解決することができます」と山田氏。
最後に今後の展望についてお伺いしました。
現在はDataCollectを活用してアプリ間の情報を集計して予実管理を実施していますが、会社全体の経営指標となる係数の管理はまだ実現できていません。人的リソースなどの工数管理も含めて正確な数字把握が可能な環境整備を進めていきたいと意欲的です。
他にも、DataCollectで在庫管理を実施している業務については、適正在庫を見極めたうえでkMailerを使って自動発注できるような仕組みづくりや、FormBridgeとkViewerを連動させてセミナー予約時の残座席数を表示させるなど、さまざまな現場の業務効率化に役立てていきたいと期待を寄せています。
また、最近kintoneのオフィシャルパートナーになった同社だけに、内部の仕組みづくりで得た知見を武器に、説得力を持って外販に向けて活動していきたいと語ります。「ある意味で先行投資としての社内実績ができた段階です。我々情報システム部門としては、もっと便利に活用できる事例を増やしていくべく、メンバーへの啓蒙を続けながら学びを増やしていきたい」と山田氏。その意味では、外部からの認証基盤となるToyokumo kintoneApp認証やkintone内のデータを外部に保存するkBackupなど、社内では現在利用していないトヨクモのプラグインについても興味を持っていると言います。
「レコードを誤って消してしまうなどオペレーションに課題がでてくれば、kBackupなどの需要は必ずあるはず。特に自治体や伝統的な日本企業などには提案段階で求められるものになってくるでしょう。機会があればぜひ学びを深めたい」と山田氏に今後について語っていただきました。
記事公開日:2023年12月28日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります