「慣れ」に頼らず、誰もが同じ帳票を作成できる仕組み作りに成功!PrintCreatorで属人性を解消し、DXを加速させた町工場の事例

株式会社オーシンは、カーボン発熱体を採用した独自の製造工程により、業務用IH対応の土鍋や陶板、ステーキ皿を製造・販売している会社です。
同社では顧客情報を管理するために販売管理ソフトを導入していましたが、製品や事務手続きに関する情報は散逸しており、必要な資料の検索や社内連携に時間がかかっていました。
そこで業務効率を改善するため、2020年11月からkintoneの試験導入を開始。社内に散在していた情報を集約することに成功しました。その後、紙の帳票の出力が伴う業務をkintoneへ移行するために、PrintCreatorを導入し、新入社員からベテラン社員まで誰もが効率的に業務を行える環境を整えました。
本記事では、株式会社オーシンの藤田 創氏に、トヨクモkintone連携サービス導入の目的や活用方法を伺いました。
kintone導入により属人化を解消。情報の一元化を実現し、誰でも必要な情報へアクセスできるように
これまで同社では、顧客管理システムとして弥生販売や、弥生会計を利用してきました。しかし、商品特性や社内の事務手続きに関する情報は管理されておらず、ベテラン社員の知識や経験則をもとに判断されることがほとんどでした。藤田氏は、「私自身も入社当初は苦労しました」と当時を振り返ります。
「弊社で扱う土鍋などの調理器具は、一見すると似ているものが多いため、新入社員が製品名を頼りに探そうとしても簡単には見つけられず、その度に先輩や上司に確認せざるを得ない状況でした。人によって答えが異なることも多く、一つの業務を始めるまでにいくつもの段階を踏まなければならず、困っていました」(藤田氏)
こうした課題を受け、藤田氏は「誰でも簡単に最新情報が分かるデータベース化」に向けた取り組みに着手。もともと社員の稼働管理のために契約していたものの、活用されていなかったkintoneライセンスの利用を本格的に開始しました。使い始めてすぐに、システムの知識が無くても直感的に操作できるシンプルさや、スマートフォンで簡単に操作できる利便性、社外からもアクセスできる柔軟性に魅力を感じたそうです。
「他社製品も検討しましたが、当社の3事業部それぞれに顧客情報を切り分けて管理するためには複数契約が必要となり、予算や運用上の課題に直面していました。その点、kintoneは事業部ごとの管理が可能であり、さらに『こんなアプリがあれば』という発想をすぐに実現できる柔軟性も兼ね備えています。価格帯とソリューションを兼ねたシステムは、kintone以外に見当たりませんでした」(藤田氏)
まずは1年かけて開発部門に導入し、製造部門、さらに全社へと段階的に展開していきました。この2年間でライセンス数は、当初の3名から5名へと拡大。現在では全社員15名がkintoneを活用して、顧客管理から社内申請まで幅広い業務を行っています。
初めに作成したのは、商品リストアプリです。商品画像や商品名、仕様などの必要な情報を集約することで、従来30分以上かかっていた情報収集の時間が、わずか5分未満に短縮されました。また、商品名の一部や曖昧なキーワードでも検索可能に設定し、誰でも簡単に必要な情報にアクセスできる仕組みを実現したそうです。
▲商品リストアプリ外部写真や別名を登録することで、目的の商品情報に辿りつきやすいよう工夫している。
さらに、kintoneの活用をきっかけに、「情報を探せない社員を責めるのではなく、情報共有の仕組み自体を見直すようになった」と藤田氏は話します。
現在では、不足している情報があった場合はその場で社員がレコードを更新する習慣が定着し、主要製品である土鍋は99%以上の製品仕様が登録されているそうです。また、kintone上の情報が最新である、という認識が社内に浸透した結果、「言った・言わない」のトラブルも減少したと言います。
PrintCreatorを導入し、特定の社員に依存していた帳票出力を誰もができる状態へ
ペーパーレスが進む中でも、製造業である同社において紙は欠かせないツールです。例えば、製品を加工場所に合わせてラックごと移動させる際、その都度データベースを確認するのは効率的とは言えません。そのため、紙の加工依頼書を製品に添付することで、取り違えや作業ミスのリスクを避けているのです。
活用方法①加工依頼書・出荷依頼書
同社では、PrintCreatorを導入するまで、特定の担当者しか加工依頼書を作成できませんでした。入力項目の元情報が複数のExcelシートに分かれていて煩雑な上、Excelシートの管理も属人化していたためです。また、Excelシートの更新漏れにより、仕様変更前の情報をもとに加工依頼書を作成してしまうことがあり、データの不一致も発生していました。
このような状況が続く中、加工依頼書の作成を担当していた社員が休暇を取った際、業務が滞ったことをきっかけに属人化の解消が急務となります。そして、会社見学に訪れた企業から受けた「PrintCreatorなら、加工依頼書もkintoneから短時間で綺麗に出力できるのでは?」というアドバイスに後押しされ、同社はPrintCreatorを導入しました。
▲加工依頼書作成アプリ。必要事項を入力し、アプリ上部の「出力」ボタンを押すと、PrintCreatorの機能でその場で加工依頼書が出力される
「PrintCreatorは出力ボタンを押してからのレスポンスが迅速で、タイムラグによるストレスがなく、快適に作業が進められます。また、文字数などによってフォーマットが崩れることなく、従来使用していた帳票の背景を固定できる点も良かったです」(藤田)
▲PrintCreatorで出力した加工依頼書
▲PrintCreator導入前に使用していたExcelのフォーマット。使い慣れたExcelのフォーマットを背景に設定できるため、移行時のギャップが少ない
さらに、PrintCreatorを導入したことでkintoneの商品リストアプリから直接加工依頼書を出力できるため、内容が常に最新の仕様書と対応するようになり、データの不一致も解消されました。
また、同社では加工依頼書と同様に出荷依頼書もPrintCreatorで出力しており、様々な帳票の作成業務において工数を削減し、書き間違いによるリスクを解消しています。
▲PrintCreatorで出力した出荷依頼書。加工依頼書と同様に商品リストアプリと連携しているため、商品や納入先の情報の記入ミスが発生しない
活用方法②請求書
同社では主に、既存の販売管理ソフトでは対応できないような、例外的な請求書を発行する際にPrintCreatorを使用しています。手書きの請求書とは異なり、kintone上で発行履歴が検索できるため、実際の入金と照らし合わせることができるのがメリットです。
▲請求書発行アプリ
▲PrintCreatorで出力した請求書
「普段は弥生販売のシステムを使用して請求書を発行していますが、特例でサンプル品の貸出が発生したり、会社に鍋だけ購入しに来たりした顧客がいた場合、アプリを介して請求書を発行しています。履歴が残るため便利です」(藤田氏)
「これまで手書きでやってきた」製造業こそ、PrintCreatorがおすすめな理由・アナログな現場で浸透させる方法
各種帳票は、手書きやExcelで作成・管理すると手間がかかる上、ヒューマンエラーも生じてしまいがちです。しかしPrintCreatorを活用することで、製品情報を確認する手間や誤入力を大幅に削減でき、誰でも簡単に正確な帳票を出力できます。これにより、新入社員やツールに不慣れな社員でも安心して作業に取り組めるようになります。
「例えば、手書きの場合は1と7を読み間違えたり、必須項目を記入漏れしてしまうリスクがあります。しかしPrintCreatorを使えば、こうした製造業としての致命的なミスを防ぐことができ、作業の精度と安全性が向上します。その点で、PrintCreatorと製造業は相性がいいと思います」(藤田氏)
また、アナログな手法が根付いている製造業でPrintCreatorを浸透させるには、移行を急ピッチに進めるのではなく、段階的に進めるのが効果的だったそうです。
「移行期間中は、従来の方法と並行してPrintCreatorを使用していました。それにより、新しいツールに苦手意識がある社員に対しても、無理のないスピードで導入を進めることができたと思います。また、使い慣れているExcelのフォーマットをそのまま背景として使用できるため、心理的に受け入れやすかったのも利点でした。さらに、PrintCreatorなら日付の表記ルールなども細かく設定できるため、他社製品に比べてツール移行時のギャップを最小限に抑えられたと思います。
長期に渡り手書きでの運用が続いている現場では、新しいツールがなくても困らないかもしれません。しかし、新入社員が一から業務を習得しようとすると、ベテラン社員の頭の中にある知識や長年の経験に頼る場面が多くなりがちです。
こうしたノウハウを可視化するkintoneやPrintCreatorは、新入社員にとっても効率的な学習手段となり、現場全体の業務の標準化と効率化を後押しすると言えます。」(藤田氏)
ベテラン社員の慣れや感覚に頼ってきた業務をシステム化し、さらなる業務改善を進める
全社員がkintoneを活用できる環境を整え、全社的な生産性向上に努めてきた藤田氏。これまでの取り組みを振り返り、次のように話します。
「現在kintone上にあるデータは、一人ではなく、現場で製造に携わる方々の協力によって充実してきました。日頃から業務に関するノウハウを追加したり、より使いやすくなるためのアイデアをいただけたりするので助かっています。お陰様で、より使いやすい業務システムに日々発展しています。今後は加工依頼書や請求書だけではなく、より多くの種類の帳票の改良も進めていきたいです」(藤田氏)
そして、今後の取り組みの一つとして挙げているのが、出荷依頼書の改善です。現在は出荷指示の粒度が社員により異なっているため、成果にばらつきが生じてしまいます。梱包指示などを含めた、より細やかな出荷依頼書を作成できれば、新入社員でもベテラン社員でも変わらない作業水準を保てるのではと構想しています。
kintoneとPrintCreatorを活用して、藤田氏が目指すのは「見たら誰でもできる」状態です。
「例えば、製品を梱包する際に、どの資材を使い、どのように梱包すれば安全に届けられるのか、初めは判断が難しいことがあります。しかし、製品ごとにその情報が紐づけられたシステムがあれば、誰でも正しく対応できるようになるはずです。取引先ごとに納品書を同梱するか・しないかといった細かな違いもあるため、人の記憶や経験に頼らず、情報を一元管理する仕組みはとても大切なこと。これからも、属人性をなくした環境をより強固にするために、業務改善を進めていきたいと考えています」(藤田氏)
記事公開日:2024年10月17日
※事例記事の内容や所属は取材当時のものとなります